19年間の不法在留と中古車輸出ビジネスの闇：スリランカ人逮捕の背景を徹底解説

1. 事件の概要：不法在留と中古車輸出

2024 年春、約 19 年間も短期滞在ビザのまま日本に居座っていたスリランカ人の男が逮捕されました。彼は埼玉県内で中古車販売会社を装い、年間数百台規模で車を買い集め、主に中東へ輸出していたとみられています。
中古車輸出は合法ビジネスですが、仕向地・買主・検査の実態が書類中心で完結しやすいため、在留資格のチェックが後回しになりやすいのが実情です。

2. 入管難民法違反とは？罰則と手続き

短期ビザ（90 日以内）は観光や商用を想定しており、働くことも長期滞在も認められていません。更新手続きを行わずに滞在し続けると、入管難民法 70 条に基づく不法残留罪が成立し、3 年以下の懲役・300 万円以下の罰金、もしくはその併科が科されます。摘発後は収容・送還の手続きが進み、退去強制命令に従わない場合は刑事罰も追加されます。

3. 中古車輸出ビジネスの現状と課題

日本車は耐久性と右ハンドルが評価され、アフリカ・中東・南アジアで根強い需要があります。
輸出フローは以下の通りです。

• 国内オークション・買取店で車両を調達
• 通関前検査（JEVIC 等）を受ける
• コンテナまたはRORO 船で港から輸出

このフローでは実車確認者が輸出許可担当者と異なるため、不法就労者やブローカーが介入しやすいという構造的な盲点があります。

4. 仮ナンバー利用の落とし穴と法的リスク

車検切れの車を港まで自走搬送する際、市町村で発行される仮ナンバー（回送運行許可番号）が必要です。正規用途は「検査・登録・整備」。しかし、逮捕された男は複数自治体から仮ナンバーを取得し、期間を偽って転売や輸出に流用していました。
道路運送車両法違反が適用され、罰則は6 か月以下の懲役または 30 万円以下の罰金。悪質な場合は車両押収や事業停止処分もあり得ます。

5. 再発防止に向けた対策と業界の取り組み

入国在留管理庁は 2023 年以降、港湾エリアに専門チームを配置し、通関書類と在留資格を紐づけて即時照会する新システムを運用開始。また業界団体（JU 中販連など）は、会員企業に対し仮ナンバー台帳の電子管理を義務化し、不審な連続取得があった場合に自治体と情報共有する仕組みを構築しました。

重要な洞察

• 長期不法在留者は身元確認が緩い輸出現場に潜り込みやすい──書類主体の検査体制が原因。
• 仮ナンバーの発行・管理をデジタル化し、発行目的ごとに QR コードで運行経路を追跡すれば、類似事件を大幅に抑止できる。

クルマを海外へ売るのは日本経済にとって貴重な外貨獲得手段ですが、コンプライアンスが守られてこそ持続的な市場となります。輸出事業者は「安さ」や「早さ」だけでなく、適法性という品質を今こそ問われています。